2008年11月30日日曜日

12・12連続講座第10回教科書問題と戦争と軍隊を考える

沖縄戦首都圏の会は沖縄、大阪の団体とともに先月19日、文科省へ日本軍の強制を削除した検定意見の撤回を要請しました。しかし、相変わらず、文科省の態度は頑なです。

裁判には勝利しているものの、「検定意見」撤回を求める運動があらためて求められています。

今度で10回目を迎える連続講座では前田朗さん(東京造形大学教授)をお招きし、教科書問題と戦争と軍隊を考える」学習会を開催いたします。ぜひご参加ください。

社会科教科書懇 再訂正へ要望/執筆者重視 方針を確認 沖縄タイムス
http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-11-06-M_1-023-1_004.html

撤回要請に回答せず 教科書検定問題/文科省 再訂正明言避ける 沖縄タイムス
http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-11-20-E_1-005-2_001.html?PSID=8659d3f8667495a5a1d63a6790f6d8fe

歴史教科書問題、再訂正の申請要請 - 琉球新報 -
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-136574-storytopic-62.html


転送歓迎!


★12・12「沖縄戦首都圏の会」連続講座第10回>
■教科書問題と戦争と軍隊を考える■
○講 師 前田 朗さん(東京造形大学教授)
○日 時:2008年12月12日(金) 開始:18時30分 終了予定:21時
○場 所:文京区民センター 3A会議室 ○資料代:500円
○主 催:大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会

☆国連でも追及された日本の教科書問題と軍隊のない国を訪ねて戦争と軍隊を考える

☆講師:前田 朗さん(東京造形大学教授)
1955年札幌生まれ。中央大学法学部、同大学院法学研究科を経て、東京造形大学教授(専攻:刑事人権論、戦争犯罪論)。日本民主法律家協会理事、在日朝鮮人・人権セミナー事務局長、アフガニスタン国際戦犯民衆法廷共同代表、イラク世界民衆法廷国際コーディネータ、無防備地域宣言運動全国ネットワーク呼びかけ人。

大江・岩波沖縄戦裁判は、いよいよ最高裁に移ります。しかしながら、原告の主張を根拠の一つとする沖縄戦の教科書記述の歪曲は、文部科学省が未だに撤回していません。

今回の学習会では、日本の教科書問題が国連でも問題になっている状況を、国連人権委員会に毎年参加しておられる前田朗さんにご報告いただきます。

また前田さんは世界で軍隊を持たない国々を訪ね歩き『軍隊のない国家 27の国々と人びと』(日本評論社、2008年)にまとめられました。その報告も併せて伺います。

○日時:2008年12月12日(金)開始:18時30分 終了予定:21時
○資料代:500円
○場所:文京区民センター 3A会議室
 地下鉄都営三田線/大江戸線春日駅から徒歩0分(A2出口直上)
 丸の内線/南北線後楽園駅から徒歩3分 JR総武線/水道橋駅から徒歩10分

◆予約は不要です。当日会場に直接お越しください。

主 催:大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
   (略称:沖縄戦首都圏の会)
連絡先:〒101-0051 東京都千代田区神田神保町3-2 千代田区労協気付
TEL 03-3264-2905 FAX03-3264-2906
http://okinawasen.blogspot.com/

2008年11月12日水曜日

11・12大阪高裁判決報告会


大阪高裁判決(2008年10月31日)

転送歓迎!


★11・12「大江・岩波沖縄戦裁判」大阪高裁判決報告会★

○日 時:2008年11月12日(水) 開始:18時30分 終了予定:21時
○場 所:文京区民センター 3A会議室 ○資料代:500円

○主 催:大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
     大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会(大阪)
     沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会(沖縄)

●弁護団からの報告

●岩波書店からの発言 岡本厚さん(訴訟担当)

●判決を読んで 中村政則さん(一橋大学名誉教授)

●大阪から 平井美津子さん(大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会)


●沖縄戦首都圏の会から 今後の取り組みについて

○日時:2008年11月12日(水)開始:18時30分 終了予定:21時
○資料代:500円
○場所:文京区民センター 3A会議室
 地下鉄都営三田線/大江戸線春日駅から徒歩0分(A2出口直上)
 丸の内線/南北線後楽園駅から徒歩3分 JR総武線/水道橋駅から徒歩10分

◆予約は不要です。当日会場に直接お越しください。

◇予告◇
★<沖縄戦首都圏の会>連続講座第10回国連でも追及された日本の教科書問題(仮)
【講師】前田朗さん(東京造形大学教授)
2008年12月12日(金) 18時30分 文京区民センター


大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
(略称:沖縄戦首都圏の会)
連絡先:〒101-0051 千代田区神田神保町3-2 千代田区労協気付
TEL 03-3264-2905 FAX03-3264-2906
http://okinawasen.blogspot.com/

2008年11月5日水曜日

大阪高裁判決についての三団体共同声明

  1. 2008年10月31日、大阪高等裁判所第4民事部(小田耕治裁判長)は、平成20年(ネ)第1226号 出版停止等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成17年(ワ)第7696号)、いわゆる大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判控訴審で、「本件各控訴および各控訴人らの当審各拡張請求をいずれも棄却する。当審における訴訟費用は控訴人らの負担とする」との判決を言い渡した。

  2. 大阪高裁判決は基本的に原審を維持し、ふたたび、沖縄戦の真実を歪曲した控訴人(原告)らの主張の誤りを明確にしたばかりでなく、控訴人らの主張の信用性を立証するための裏付け調査等がなされた形跡もないことなど、きわめて問題だと指摘し,控訴人ら弁護士の立証活動が科学的、実証的なものではなく,いい加減なものであったと指摘したものと言える。

  3. それにかかわって、控訴人梅澤が「自決するな」と言ったという主張を明確に否定し、住民に玉砕(自決)を求める方針を決して変更しなかったことも認定したことは重要である。さらに控訴人らが持ち出した宮平秀幸新証言を虚言と断じ、それを擁護し補強を試みた藤岡信勝意見書なども採用できないと断言したことも重要である。

  4. 戦隊長梅澤・赤松の玉砕(自決)命令については、「伝達経路が判然としない」という原審を訂正し、「住民への直接命令」と狭く限定したうえで、証拠上からそれを認定するのは無理があるとした。本来ならば、事実上の戒厳令下の「合囲地境」にあった慶良間列島において、命令の伝達経路は明確にされており、隊長命令なしに集団死が起こり得なかったことを判示すべきだったと考える。

  5. しかし重要なことは、もっとも狭い意味での隊長命令の存在を認定しなかったからといって、それが、隊長命令がなかったことを意味するものでもなく、総体としての日本軍の強制ないし命令と評価する見解もありうると、高裁判決が明言していることである。

  6. そのさい、国家機関としての裁判所は本訴訟の主題である名誉毀損等の成否にかかわる限りで歴史事実についての判断をするべきであって、本来、歴史的事実の認定は歴史研究の場において研究し論議を蓄積していくべきものであるとしたのは妥当な判断であり、それは控訴人らが集団死についての軍命の存在を否定することを裁判所に求め、それをもって教科書を書き換え、国民の歴史認識を歪曲しようとしたことの不当性をいっそう明らかにしたものといえる。

  7. 高裁判決は、新たに、日本国憲法が保障する言論表現の自由を最大限に尊重することが民主主義社会の基盤であるという立場から、出版差し止めが成立するための条件を明確にし、それにもとづいて出版差し止め請求を棄却した。これは憲法が定める権利の保障をいっそうすすめるうえで貴重な判断である。とりわけ公務員に関すること、いいかえれば国家権力の行為についての自由な言論の保障の必要性が高いことを明確にしたことは重要である。この判断に従うならば、国家権力を構成する軍隊の行為について教科書においても自由な言論が保障されるべきである。教科書記述を政府が認める特定の枠のなかにとじこめようとする教科書検定、とりわけ今回の沖縄戦検定の不当性は、この点からもいっそう明らかになった。

  8. よって文部科学省に対し、沖縄戦に関する2006年度検定意見をただちに撤回し、「集団自決」における軍の強制・命令の記述の復活を含め、記述の再訂正による改善を直ちに認めることを強く要求する。

  9. 控訴人らは最高裁に上告するとのことであるが、最高裁に対し、すみやかに上告を棄却することを求める。

2008年11月5日

大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会
沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会
大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
連絡先:大阪市北区芝田2-4-2牛丸ビル3階「うずみ火」編集部
電話・FAX 06-6453-2448

2008年11月2日日曜日

大阪高裁判決:大江健三郎氏のコメント

ベルリン自由大学での講義のためにベルリンに滞在しており、判決を直接聞くことができませんでした。いま、私たちの主張が認められたことを喜びます。

私が38年前にこの『沖縄ノート』を書いたのは、日本の近代化の歴史において、沖縄の人々が荷わされた多様な犠牲を認識し、その責任をあきらかに自覚するために、でした。沖縄戦で渡嘉敷島・座間味島で700人の島民が、軍の関与によって(私はそれを、次つぎに示された新しい証言をつうじて限りなく強制に近い関与と考えています)集団死をとげたことは、沖縄の人々の犠牲の典型です。それを本土の私らはよく記憶しているか、それを自分をふくめ同時代の日本人に問いかける仕方で、私はこの本を書きました。

私のこの裁判に向けての基本態度は、いまも読み続けられている『沖縄ノート』を守る、という一作家のねがいです。原告側は、裁判の政治的目的を明言しています。それは「国に殉ずる死」「美しい尊厳死」と、この悲惨な犠牲を言いくるめ、ナショナルな氣運を復興させることです。

私はそれと戦うことを、もう残り少ない人生の時、また作家としての仕事の、中心におく所存です。


(2008年10月31日)

大阪高裁(第二審)も勝訴!!


琉球新報PDF版速報(523KB)


「大江・岩波沖縄戦裁判」の控訴審判決で、大阪高裁(小田耕治裁判長)は10月31日午後2時開廷し、原告の控訴をいずれも棄却しました。

判決要旨

アジア・太平洋戦争の末期、沖縄戦で慶良間列島の座間味島、渡嘉敷島で起きた「強制集団死」(「集団自決」)をめぐり、座間味島と渡嘉敷島に当時駐屯していた旧日本軍の元戦隊長の梅澤裕氏と故赤松嘉次氏の遺族が、作家の大江健三郎氏と岩波書店に「沖縄ノート」などの出版の差し止めと謝罪広告の掲載、慰謝料を求めていた裁判の控訴審で、大阪高裁は大阪地裁(第一審)判決を支持し、原告らの請求をいずれも棄却しました。

被告席には岩波書店関係者、大江健三郎氏はドイツ出張中のため欠席。原告席には梅澤裕氏らも出席。
小田耕治裁判長は「原告各控訴を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」と述べ、午後2時01分に閉廷しました。

判決を前に65の傍聴券に281人が並びました。

原告側は上告の予定。

ご支援ありがとうございます。



「大江・岩波沖縄戦裁判」大阪高裁判決報告集会
2008年11月12日(水) 18時30分 文京区民センター


【関連報道】リンク切れの場合あり

隊長命令否定せず
岩波訴訟、梅澤氏側の訴え棄却

琉球新報 -2008年10月31日
【大阪】沖縄戦中、座間味・渡嘉敷両島で起きた「集団自決」(強制集団死)をめぐり、両島に駐留していた日本軍の戦隊長が住民に自決を命じたとの記述は誤りだとして、座間味島元戦隊長の梅澤裕氏や、渡嘉敷島戦隊長の故赤松嘉次氏の弟の秀一氏が「沖縄ノート」著者の作家 ...

岩波・大江裁判控訴審の争点表
琉球新報 -2008年10月30日


集団自決訴訟の判決要旨
大阪高裁判決

共同通信 -2008年10月31日
沖縄集団自決訴訟の31日の大阪高裁判決の要旨は次の通り。
当裁判所も1審同様、梅沢元守備隊長らの請求はいずれも理由がないと判断する。
「太平洋戦争」の記述は梅沢元隊長、「沖縄ノート」の記述は梅沢元隊長と赤松元隊長の社会的評価を低下させる内容だが、高度な ...

二審も「軍の深い関与」認める=大江さん著書の名誉棄損否定-沖縄戦集団自決訴訟
時事通信 -2008年10月31日
太平洋戦争末期の沖縄戦で住民に集団自決を命じたとする虚偽の記述で名誉を傷つけられたとして、元日本軍守備隊長らが「沖縄ノート」の著者大江健三郎さん(73)と岩波書店を相手に、出版差し止めや慰謝料などを求めた訴訟の控訴審判決が31日、大阪高裁であり、小田 ...

2審も「軍が深く関与」
集団自決、大江さんら勝訴

共同通信 -2008年10月31日
太平洋戦争末期の沖縄戦で旧日本軍が「集団自決」を命じたとする作家大江健三郎さん(73)の「沖縄ノート」などの記述をめぐり、沖縄・慶良間諸島の当時の守備隊長らが名誉を傷つけられたとして、岩波書店と大江さんに出版差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決で、大阪 ...

「沖縄ノート」差し止め訴訟
「真実でないことが明白になったとまでいえず」

MSN産経ニュース2008年10月31日
大戦末期に起きた沖縄の集団自決をめぐるノーベル賞作家、大江健三郎氏(73)の著書『沖縄ノート』などの出版差し止め訴訟で31日、旧日本軍の元戦隊長と遺族の請求を1審に続いて退けた大阪高裁(小田耕治裁判長)は、判決理由で、両元隊長が住民に直接自決命令を発 ...

沖縄ノート訴訟
史実と向き合う言論の勝利だ

愛媛新聞 -2008年11月1日
「集団自決は日本軍が深くかかわっていることは否定できず、総体としての軍の強制ないし命令と評価する見解もあり得る」―おとといの大阪高裁判決だ。
大江健三郎さんの「沖縄ノート」には、太平洋戦争末期の沖縄戦で旧日本軍が住民に「集団自決」を命じたとする記述がある ...

「真実相当」と認定/「集団自決」訴訟
沖縄タイムス -2008年11月1日
「集団自決」訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(小田耕治裁判長)は三十一日、「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の関与を認め、戦隊長による関与についても「十分に推認できる」とした一審・大阪地裁判決を支持し、元戦隊長側の控訴を棄却した。 ...

[控訴審判決]
沖縄タイムス -> 2008年11月1日
沖縄戦の際、慶良間諸島で起きた「集団自決(強制集団死)」をめぐる裁判の控訴審判決で、大阪高裁の小田耕治裁判長は原告の主張を退け、控訴を棄却した。
今年三月の大阪地裁判決に続いて再び、元戦隊長側敗訴の判決が言い渡されたことになる。 小田裁判長は「最も狭い ...

「集団自決」沖縄戦訴訟
しんぶん赤旗 -2008年10月31日
沖縄戦の「集団自決」での軍の命令を否定する元日本軍の守備隊長らが、大江健三郎氏(73)の著書『沖縄ノート』などで「自決を命じたと書かれ名誉を傷つけられた」とし、同氏と出版元の岩波書店を相手に出版差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(小田耕治 ...

沖縄戦集団自決・損賠訴訟:沖縄ノート控訴審
出版差し止めに基準、控訴棄却

毎日新聞 -2008年10月31日
ノーベル賞作家、大江健三郎さん(73)の著作「沖縄ノート」などで、沖縄戦で集団自決を命令したと虚偽の記述をされ名誉を傷つけられたとして、旧日本軍の戦隊長らが大江さんと出版元の岩波書店に、出版差し止めと慰謝料3000万円の支払いを求めた訴訟の控訴審判決...

沖縄ノート訴訟、集団自決に軍関与を大阪高裁も認定
読売新聞 -2008年10月31日
沖縄戦で住民に集団自決を命じたと、作家・大江健三郎さん(73)の著書「沖縄ノート」などで虚偽の記述をされ、名誉を傷つけられたとして、旧日本軍の元少佐らが、大江さんと発行元の岩波書店(東京)に出版差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決が31日、大阪高裁で ...

「沖縄ノート」差し止め訴訟
上告審では真正面から判断を

MSN産経ニュース -2008年10月31日
沖縄集団自決訴訟の控訴審判決で大阪高裁は1審判決と同様、元戦隊長らが集団自決を命じたとする『沖縄ノート』の記述の真実性は否定したものの、著者の大江健三郎氏が真実と信じる相当の理由があったとする「真実相当性」を根拠に原告側の請求を棄却した。 ...

【社説等】
社説:[控訴審判決]
沖縄タイムス-2008年11月1日
沖縄戦の際、慶良間諸島で起きた「集団自決(強制集団死)」をめぐる裁判の控訴審判決で、大阪高裁の小田耕治裁判長は原告の主張を退け、控訴を棄却した。 今年三月の大阪地裁判決に続いて再び、元戦隊長側敗訴の判決が言い渡されたことになる。 小田裁判長は「最も狭い ...

社説:岩波・大江訴訟 県民納得の妥当判決だ
琉球新報-2008年11月1日
沖縄戦時に座間味・渡嘉敷両島で起きた「集団自決」(強制集団死)に旧日本軍はどう関与したかなどをめぐる史実論争に再び司法判断が示された。
 沖縄戦体験者の証言をはじめ歴史研究の積み重ねなどを踏まえた妥当な判決だ。結論を導く筋道が分かりやすい。歴史的事象に対する客観性や普遍性に主眼を置いた解釈、明快な論理展開で言論・出版の自由へ踏み込んだことも特筆される。...

社説:集団自決判決―あの検定の異常さを思う
朝日新聞-2008年11月1日
太平洋戦争末期の沖縄戦で、住民の集団自決に日本軍が深くかかわっていた。そのことが大阪地裁に続いて大阪高裁でも認められた。06年度の教科書検定で、軍のかかわりを軒並み削らせた文部科学省の判断の異常さが改めて浮かび上がる。

社説:沖縄ノート高裁判決 言論の萎縮に警鐘を鳴らした
毎日新聞-2008年11月2日
沖縄戦で住民に集団自決を命じたとの記述で名誉を傷つけられたとして、旧日本軍の戦隊長らが「沖縄ノート」の著者の大江健三郎さんと岩波書店に出版差し止めと慰謝料を求めた裁判で、大阪高裁は原告の主張を退けた1審判決を支持し、控訴を棄却した。 ...

社説:集団自決判決
検定の立場は維持すべきだ

読売新聞 -2008年10月31日
結論は1審判決と変わりはない。しかし、受け止め方によっては、沖縄戦の集団自決をめぐる歴史教科書の記述に、新たな混乱をもたらしかねない判決である。
集団自決を命じたと虚偽の記述をされ名誉を傷つけられたとし、旧日本軍の守備隊長だった元少佐らが、作家の大江 ...

【主張】沖縄集団自決訴訟
判決と歴史の真実は別だ

MSN産経ニュース -2008年10月31日
沖縄戦で旧日本軍の隊長が集団自決を命じたとする大江健三郎氏の著書「沖縄ノート」などの記述をめぐり、大阪高裁も同地裁同様、大江氏側の主張をほぼ全面的に認める判決を言い渡した。 訴訟は、大江氏らが沖縄県渡嘉敷・座間味両島での集団自決は隊長の命令によるものと...

2008年10月31日金曜日

10・31大阪高裁判決要旨

原告各控訴を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。

【判断の大要(判決114頁以下)】
当裁判所も,原告同様,控訴人らの各請求は,当審で拡張された分を合めていずれも理由がないものと判断する。
(1)「太平洋戦争」の記述は控訴人梅澤の,「沖縄ノート」の各記述は控訴人梅澤及び赤松大尉の,各社会的評価を低下させる内容のものであったと評価できること,しかし,これらは高度な公共の利害に関する事実に係わり,かつ,もっぱら公益を図る日的のためになされたものと認められること,以上の点は,おおむね原判決が説示するとおりである。
(2)座間味島及び渡嘉敷島の集団自決については,『軍官民共生共死のー体化』の大方針の下で日本軍がこれに深く関わっていることは否定できず,これを総体としての日本軍の強制ないし命令と評価する見解もあり得る。しかし,控訴人梅澤及ぴ赤松大尉自身が直接住民に対してこれを命令したという事実(最も狭い意味での直接的な隊長命令-控訴人らのいう「無慈悲隊長直接命令説」)に限れぱ,その有無を本件証拠上断定することはできず,本件各記述に真実性の証明があるとはいえない。
(3)集団自決が控訴人梅澤及び赤松大尉の命令によるということは,戦後間もないころから両島で言われてきたもので,本件各書籍出版のころは,梅澤命令説及び赤松命令説は学会の通説ともいえる状況にあった。したがって,本件各記述については,少なくともこれを真実と信ずるについて相当な理由があったと認められる。また,「沖縄ノート」の記述が意見ないし公正なる論評の域を逸脱したとは認められない。したがって,本件各委籍の出版はいずれも不法行為に当たらない。
(4)本件各書籍(「太平洋戦争」はその初版)は,昭和40年代から継続的に出版されてきたものであるところ,その後公刊された資料等により,控訴人梅澤及ぴ赤松大尉の前記のような意味での直接的な自決命令については,その真実性が揺らいだといえるが,本件各記述やその前提とする事実が真実でないことが明白になったとまではいえない。他方,本件各記述によって控訴人らが重大な不利益を受け続けているとは認められない,そして,本件各記述は,歴史的事実に属し日本軍の行動として高度な公共の利害に関する事実に係わり,かつ,もっぱら公益を目的とするものと認められることなどを考えると,出版当時に真実性ないし真実相当性が認められ長く読み継がれている本件各書籍の出版等の継続が,不法行為に当たるとはいえない。(注 この判断の前提となる法律的判断は,後記の抜刷りのとおり)
(5)したがって,控訴人らの本件請求(当審での拡張請求を含む)はいずれも理由がない。
【証拠上の判断】
(1)控訴人梅澤は,昭和20年3月25日本部壕で「決して自決するでない」と命じたなどと主張するが、到底採用できず、助役ら村の幹部が揃って軍に協力するために白決すると申し出て爆薬等の提供を求めたのに対し,求めには応じなかったものの,玉砕方針自体を否定することもなく,ただ「今晩は一応お帰り下さい。お帰り下さい」として帰しただけであると認めるほかはない(判決208頁以下に詳述)。
(2)宮平秀幸は,控訴人梅澤が本部壕で自決してはならないと厳命し,村長が忠魂碑前で住民に解散を命じたのを聞いたなどと供述するが,明らかに虚言であると断じざるを得ず,これを無批判に採用し評価する意見書,報道,雑誌論考等関連証拠も含めて到底採用で寺ない(判決240頁以下に詳述)。
(3)梅澤命令説,赤松命令説が援護法適用のために後から作られたものであるとは認められない。これに関連して,照屋昇雄は,援護法適用のために,赤松大尉に依頼して自決命令を出したことにしてもらい、サインなどを得て命令書(?)をねつ造した旨を話しているが,話の内容は全く信用できず,これに関連する報道,雑誌論考等も含めて到底採用できない(判決189頁以下に詳述。203頁で総合判断。)。
(4)宮村幸延の「証言」と題する親書の作成経緯を,控訴人梅澤は,本件訴訟において意識的に隠しているものと考えざるをえない,証拠上認められるその作成経緯に照らし,「証言」は,家族に見せ納得させるためだけのものだと頼まれて初枝から聞いていた話をもとに作られたものに過ぎず,遺族補償のために梅澤命令がねつ造されたものであることを証するようなものとは評価できない(判決194頁以下に詳述)。
(5)時の経過や人々の関心の所在,本人の意識など状況の客観的な変化等にかんがみると,控訴人らが,本件各書籍の出版等の継続により,その人格権に関して,重大な不利益を受け続けているとは認められない(判決273頁以下に詳述)。
【判断の大要(4)の前提となる法律的判断(判決121頁以下の抜刷り)】       (原判決の説示を引用する形をとっているが,ゴシック部分が当裁判所が新たに判示した部分である。)
『人格権としての名誉権に基づく出版物の印刷,製本,販売,頒布等の事前差止めは,その出版物が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価,批判等に関するものである場合には,原則として許されず,その衷現内容が真実でないか又はもっぱら公益を図る目的のものでないことが明白であって,かつ,被害者が急大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときに限り,例外的に許される(最高裁昭和61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁参照)。
 本件では,既に出版され,公表されている書籍の出版等差止めを求めるものであるが、表現の自白,とりわけ公共的事項に関する表現の自由の持つ憲法上の価値の重要性等に艦み,原則として同様に解すべきものである。さらに,本件のように,高度な公共の利害に関する事実に係り,かつ,もっぱら公益を図る目的で出版された書籍について、発刊当時はその記述に真実性や真実相当性が認められ,長年にわたって出版を継続してきたところ,新しい資料の出現によりその真実性等が揺らいだというような場合にあっては,直ちにそれだけで,当該記述を改めない限りそのままの形で当該書籍の出版を継続するここが違法になると解することは相当でない。そうでなければ,著者は、過去の著作物についても常に新しい資料の出現に意を払い,記述の真実性について再考し続けなければならないということになるし,名誉侵害を主張する者は新しい資料の出現毎に争いを蒸し返せることにもなる,著者に対する将来にわたるそのような負担は,結局は言論を萎縮させることにつながるおそれがある。また,特に公共の利答に深く関わる事柄については,本来,事実についてその時点の資料に基づくある主張がなされ,それに対して別の資料や論拠に基づき批判がなされ,更にそこで深められた論点について新たな資料が探索されて再批判が繰り返されるなどして,その時代の大方の意見が形成され,さらにその大方の意見自体が時代を超えて再批判されてゆくというような過程をたどるものであり,そのような過程を保障することこそが民主主義社会の存続の基盤をなすものといえる。特に,公務員に関する事実についてはその必要性が大きい。そうだとすると,仮に後の資料からみて誤りとみなされる主張も,言論の場において無価値なものであるとはいえず,これに対する寛容さこそが,自由な言論の発展を保障するものといえる。したがつて,新しい資料の出現によりある記述の真実性が揺らいだからといって,直ちにそれだけで,当該記述を含む書籍の出版の継続が違法になると解するのは相当でない,もっとも,そのような場合にも,①新たな資料等により当該記述の内容が真実でないことが明白になり,他方で,②当該記述を含む書籍の発行により名誉等を侵害された者がその後も重大な不利益を受け続けているなどの事情があり,③当該書籍をそのまま発行し続けることが,先のような観点や出版の自由などとの関係などを考え合わせたとしても社会的な許容の限度を超えると判断されるような場合があり得るのであって,このような段階に至ったときには,当該書籍の出版をそのまま継続することは,不法行為を構成すると共に,差止めの対象にもなると解するのが相当である。
 そして,本件で問題になっているのは,第2・2(1)アのとおり,太平洋戦争後期に座間味島で第一戦隊長として行動した控訴人梅澤及び渡嘉敷島で第三戦隊長として行動した赤松大尉が,太平洋戦争後期に座間味島,凌嘉敷島の住民に集団白決を命じたか否かであって,控訴人梅渾及び赤訟大尉は日本国憲法下における公務員に相当する地位にあり各記述は高度な公共の利害に係り,後記のようにもっぱら公益を図る目的のものであるから,本件各書籍の出版の差し止め等は,少なくとも,①その表現内容が真実でない…ことが明白であって,かつ,②被害者が重大な不利益を受け続けているときに限って認められると解するのが相当である。』

2008年10月17日金曜日

10・30連続講座第9回オーラルヒストリーの力


★10・30「沖縄戦首都圏の会」連続講座第9回>

■オーラルヒストリーの力-住民証言から見える沖縄戦■

○講 師 中村政則さん 一橋大学名誉教授
○日 時:2008年10月30日(木) 開始:18時30分 終了予定:21時
○場 所:文京区民センター 3A会議室 ○資料代:500円
○主 催:大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会

大江・岩波沖縄戦裁判は、6月25日に控訴審が始まりましたが、わずか2回の公判で9月9日の口頭弁論にて結審し、10月31日に判決が言い渡されます。

その前夜に近著『昭和の記憶を掘りおこすー沖縄、満州、ヒロシマ、ナガサキの極限状況』(小学館)で、あらためてオーラル・ヒストリーの魅力と可能性を論じ、さらには注意点と限界についても解説された中村政則さんをお招きし、連続講座第9回を開催いたします。

大江・岩波沖縄戦裁判においては、地裁・高裁の審理を通じて、沖縄戦の強制集団死の体験者の証言がきわめて重要な役割を果たしました。体験者の身を切るような証言があってこそ、地裁の勝訴を勝ち取ることができました。

3月の大阪地裁の勝訴につづいて、高裁でも勝利を勝ち取るために、私たちは集会や署名などさまざまな取り組みをしてきました。判決前夜となる本集会に是非ご参加ください。

☆オーラルヒストリーの力-住民証言から見える沖縄戦
講師:中村政則さん(一橋大学名誉教授)
専攻:日本近現代史。
著書:『近代日本地主制研究』(東京大学出版会)
 『昭和の恐慌』(小学館)
 『戦後史と象徴天皇』(岩波書店)
 『経済発展と民主主義』(岩波書店)
 『労働者と農民』(小学館)
 『現代史を学ぶ』(吉川弘文館
 『戦後史』(岩波新書)
 『昭和の記憶を掘りおこすー沖縄、満州、ヒロシマ、ナガサキの極限状況』(小学館)
  他

◇大江・岩波沖縄戦裁判の報告

○日時:2008年10月30日(木)開始:18時30分 終了予定:21時
○資料代:500円
○場所:文京区民センター 3A会議室
 地下鉄都営三田線/大江戸線春日駅から徒歩0分(A2出口直上)
 丸の内線/南北線後楽園駅から徒歩3分 JR総武線/水道橋駅から徒歩10分

◆予約は不要です。当日会場に直接お越しください。

◇予告◇
「大江・岩波沖縄戦裁判」大阪高裁判決報告集会
2008年11月12日(水) 18時30分 文京区民センター

主 催:大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
(略称:沖縄戦首都圏の会)
連絡先:〒101-0051 千代田区神田神保町3-2 千代田区労協気付
TEL 03-3264-2905 FAX03-3264-2906
http://okinawasen.blogspot.com/

2008年9月5日金曜日

9・26連続講座第8回沖縄戦の史実歪曲を斬る 

転送歓迎!


★9・26「沖縄戦首都圏の会」連続講座第8回>

□□□沖縄戦の史実歪曲を斬る□□□
○講 師 山口剛史さん 琉球大学准教授
○日 時:2008年9月26日(金)
開始:18時30分 終了予定:21時
○場 所:文京区民センター 3A会議室 ○資料代:500円
○主 催:大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会

「大江・岩波沖縄戦裁判」の原告側は、第一審敗訴後、雑誌「WiLL」臨時増刊号等で沖縄戦の史実を歪めようと盛んに喧伝しています。このような「史実歪曲」の構造や問題点などを、「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」事務局長の山口剛史さんに解説していただきます

☆沖縄戦の史実歪曲を斬る
 講師 山口剛史さん 琉球大学准教授
  「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」事務局長

☆9・9大阪高裁控訴審 第2回口頭弁論報告 事務局より

○日時:2008年9月26日(金)
開始:18時30分 終了予定:21時
○資料代:500円
○場所:文京区民センター 3A会議室
 地下鉄都営三田線/大江戸線春日駅から徒歩0分(A2出口直上)
 丸の内線/南北線後楽園駅から徒歩3分 JR総武線/水道橋駅から徒歩10分
◆予約は不要です。当日会場に直接お越しください。

◇予告◇
連続講座第9回 「オーラルヒストリーの力-住民証言から見える沖縄戦」(仮)
講師:中村政則さん(一橋大学名誉教授)
2008年10月30日(木) 18時30分 文京区民センター

主 催:大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
(略称:沖縄戦首都圏の会)
連絡先:〒101-0051 千代田区神田神保町3-2 千代田区労協気付
TEL 03-3264-2905 FAX03-3264-2906
http://okinawasen.blogspot.com/

2008年7月1日火曜日

7・25★連続講座第7回沖縄戦・基地・9条

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★「沖縄戦首都圏の会」連続講座第7回>★
□□□沖縄戦・基地・9条□□□

○講 師 小森陽一さん(東京大学教授)
○日 時:2008年7月25日(金) 開始:18時30分 終了予定:21時
○場 所:文京区民センター 3A会議室 ○資料代:500円
○主 催:大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会

沖縄には、那覇をはじめ6か所に「憲法九条の碑」があります。「復帰」から32年、九条の理想を深く求め続ける沖縄にとって、日本国憲法とは?「九条の会」事務局長が語る「沖縄戦・基地・9条」

講師:小森陽一さん(東京大学教授)
1953年、東京生まれ。日本近代文学専攻。北海道大学大学院文学研究科博士過程修了。
成城大学助教授を経て、現在、東京大学教授。雑誌『漱石研究』の編集に携わる。
「子どもと教科書全国ネット21」代表委員、「九条の会」事務局長。

著書に『漱石を読みなおす』(ちくま新書)、『世紀末の予言者・夏目漱石』(講談社)『小森陽一 ニホン語に出会う』(大修館書店)、『日本語の近代』、『ポストコロニアル』(岩波書店)。編著に『ナショナル・ヒストリーを超えて』、『内破する知』(東京大学出版会)ほか多数。

☆6・25 大阪高裁控訴審 第1回口頭弁論 報告 事務局より

○日時:2008年7月25日(金)開始:18時30分 終了予定:21時
○資料代:500円
○場所:文京区民センター 3A会議室
 地下鉄都営三田線/大江戸線春日駅から徒歩0分(A2出口直上)
 丸の内線/南北線後楽園駅から徒歩3分 JR総武線/水道橋駅から徒歩10分

◆予約は不要です。当日会場に直接お越しください。

主 催大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
(略称:沖縄戦首都圏の会)
連絡先:〒101-0051 千代田区神田神保町3-2 千代田区労協気付
TEL 03-3264-2905 FAX03-3264-2906
http://okinawasen.blogspot.com/

2008年6月4日水曜日

6・20 「沖縄戦首都圏の会」結成1周年総会

チラシ→pdf(590k)


6・20 大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
結成1周年総会
○日 時:2008年6月20日(金)開場:18時 開始:18時30分 終了予定:21時
○場 所:明治大学リバティタワー 地下1001教室  ○資料代:500円
★どなたでも参加できます

「沖縄戦首都圏の会」は昨年6月6日に結成し、一周年を迎えました。この間、多くのみなさまのご支援・ご協力により、教科書検定問題での行動や全国集会、連続講座等を実施。「岩波・大江沖縄戦裁判」の第一審(大阪地裁)では全面勝訴を勝ち取ることが出来ました。原告は不当にも控訴し、この6月25日には控訴審の第1回口頭弁論は大阪高裁で行われます。また「教科書検定意見撤回」に向けてのとりくみが引き続き求められています。これからもご支援の程、よろしくお願い申し上げます。


★記念講演★
沖縄・ヤンバルの森から、強制集団死(「集団自決」)の現場へ
森住 卓さん(フォトジャーナリスト)

新基地建設に揺れる沖縄島北部・辺野古の海、ヤンバルの森(東村・高江)など「沖縄の今」と、沖縄戦の“極限の惨劇”、強制集団死(「集団自決」)の体験者や現場をスライド写真でお伝えします。

もりずみ・たかし:1951年、神奈川県生まれ。日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)会員。1994年より世界の核実験被爆者を取材、旧ソ連セミパラチンスク核実験場の取材で週刊現代ドキュメント写真大賞を受賞。99年に出版の『セミパラチンスク』(高文研)で日本ジャーナリスト会議特別賞、平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞を受賞。98年より湾岸戦争で米英軍がイラクで使った劣化ウラン弾による人体への影響の取材を続け、イラク・クウェート国境の非武装地帯に入る。2003年のイラク戦争前後も爆撃される側の視線にたった取材を続けた。長年、「沖縄の米軍基地」を取材対象としてきたが、昨年、沖縄の現在と過去の戦争を結びつける視点から、慶良間諸島の「集団自決(強制集団死)」体験者の取材をする。著書:『核に蝕まれる地球』(岩波書店)『私たちはいま、イラクにいます』(講談社)『イラクからの報告』(小学館)『セミパラチンスク』『イラク湾岸戦争の子どもたち』『イラク 占領と核汚染』(高文研)。


○日 時:2008年6月20日(金)開場:18時 開始:18時半 終了予定:21時
○資料代:500円◆予約は不要です。当日会場に直接お越しください。
○場 所:明治大学リバティタワー 地下1001教室
   JR中央線/総武線御茶ノ水駅から徒歩3分
   丸の内線御茶ノ水駅から徒歩5分 千代田線新御茶ノ水駅から徒歩7分
   半蔵門線/都営新宿線/都営三田線神保町駅から徒歩5分


主催:大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会

2008年5月1日木曜日

5・14連続講座第6回 沖縄戦と基地 そして…

転送歓迎!

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★「沖縄戦首都圏の会」連続講座第6回>★━━━━━━━━━━━━━━━…
■ 沖縄戦と基地 そして…私の沖縄生活、この一年
○講師:柴田 健さん

○日時:2008年5月14日(水) 開始18時30分 終了予定21時
○場所:文京シビックセンター4階 シルバーホール 資料代:500円
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■ 沖縄戦と基地 そして…私の沖縄生活、この一年

○講師 柴田 健さん
沖縄平和ネットワーク首都圏の会=代表 沖縄戦首都圏の会=呼びかけ人
しばた・けん:神奈川県立高校教員。沖縄平和ネットワーク代表世話人、
神奈川県高教組平和運動推進委員会・沖縄修学旅行担当。

2007年4月から1年間教員を休職し、琉球大学大学院研究生(07年)として沖縄で暮らす。その間、沖縄平和ネットワーク会員として平和ガイドを
勤める傍ら、離島にも足を伸ばす。1年で三つの沖縄県民大会に参加。愛称「しばけん」。

<講師から>
2007年のしばけんは琉球大研究生と平和ネットワークのガイドに明け暮れました。
「集団自決」検定問題にも、沖縄と首都圏の二つの視点で関わりました。皆さんが気づかないオキナワを紹介しましょう。
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★〔寸劇〕ザ・教科書「検定」-誰でもわかる、その実態-【文京シビック版】
 ほとんどの人が知らない密室の世界、衝撃の「検定」の実態が明らかに…!
 出演:教科書・市民フォーラム有志+α
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◆日時:2008年5月14日(水)開始18時30分 終了予定21時
◆資料代:500円
◆予約は不要です。当日会場に直接お越しください。
◆場所:文京シビックセンター4階 シルバーホール
    地下鉄都営三田線/大江戸線春日駅から徒歩1分(地下から直結)
    丸の内線/南北線後楽園駅から徒歩1分
    JR総武線水道橋駅から徒歩10分
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主催:大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
   沖縄平和ネットワーク首都圏の会
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★予告 「沖縄戦首都圏の会」総会
2008年6月20日(金)開始:18時30分 終了予定:21時
於:明治大学リバティタワー 地下1001教室

2008年4月25日金曜日

教科書検定制度の抜本的な改革を求める要請

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2008年4月25日

文部科学大臣 渡海 紀三朗 殿
                  
教科書検定制度の抜本的な改革を求める要請


子どもと教科書全国ネット21
沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会
大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会
連絡先:子どもと教科書全国ネット21
〒102-0072 東京都千代田区飯田橋2-6-1小宮山ビル201
                      
 2007年3月30日の文部科学省による2006年度高校教科書の検定公開以降、私たちは、沖縄戦における強制集団死(「集団自決」)記述から「日本軍の強制」を削除した検定意見は、間違ったものであり撤回すべきだとくり返し指摘し、貴職に要請してきました。この検定意見は、その後のマスコミの取材で教科書調査官が恣意的につけたものだということが明らかになりました。さらに、2008年3月28日の大阪地方裁判所の「大江・岩波沖縄戦裁判」判決によって、原告・梅澤裕元座間味島戦隊長の陳述書と供述が「信用性に疑問がある」とされ、文科省の検定意見の根拠が失われました。このことによって、検定意見の間違いはますます明らかになりました。
 文科省(文部省)の検定意見に間違いや違法性があったことは、これまでもしばしば指摘され、家永教科書裁判最高裁判決でも確定しています。私たちは、こうした間違いや違法な検定が行われてきたのは、検定制度そのものに重大な問題点があるためだと考えます。
 貴職は2007年12月26日の談話で、検定制度改善について、今年夏までをめどに検定審議会で検討することに言及され、教科用図書検定調査審議会(教科書検定審議会)は、2008年2月28日の総会で、検定制度の透明化について改善策を検討することを決めなした。しかし、私たちは、検定制度の問題点は「透明化」だけではなく、抜本的な改革が早急に必要だと考えます。
 私たちは、日本の教科書検定制度は、先進国では例をみない遅れた制度であり、できるだけはやく廃止すべきだと思います。しかし、60年以上続いてきた制度であり、すぐに廃止することは困難がともないます。そこで、当面、検定制度をつづけるのであれば、次のような制度の改革を実行する必要があると考え、下記のことを要請いたします。
                  

当面の教科書検定制度改革についての要求
Ⅰ.教科用図書検定調査審議会(検定審議会)・教科書調査官に関すること
1)教科書調査官の権限は、検定申請された教科書を調査し、それについて検定審議会に報告するだけにとどめること。
2)検定意見の決定は、検定審議会が行うこと。
3)教科書検定を行う機関(検定審議会)は、政府・文部科学省から独立した機関にすること。
4)教科書調査官及び検定審議会委員の人選については、学会の推薦を義務づけるなど透明化、公正化すること。
5)教科書調査官は近い将来廃止し、検定申請図書の調査は、1956年までのように非常勤の現場教員や研究者が行うようにすること。

Ⅱ.検定手続き(検定規則・検定基準・検定規則実施細則)などに関すること
1)検定意見は、「誤解するおそれがある」などの抽象的な文書ではなく、従来口頭で伝達されていた部分も含め、それを読めば意見の内容がわかるように完全に文章化すること。
2)検定規則や実施細則にないのに、文科省が勝手に決めている検定意見伝達の時間制限(現在は2時間)を撤廃し、執筆者・出版社が納得がいくように質問し説明を受けられるように、十分に時間を保証すること。
3)検定により記述内容の修正を求める検定意見を付けるさいは、その学問的根拠を文書によって示すこと。
4)検定の合格・不合格の決定に至る過程を、執筆者の見解がより尊重される方向で改善すること。
5)検定意見の強制力を緩和すること。例えば、仮に検定意見に学問的根拠があり、執筆者の原稿にも学問的根拠がある場合には、文科省は検定意見に固執しないことなど。
6)検定規則第9条で20日以内に検定意見に対する「意見申立て」ができるが、この意見申立てについては、実際に機能する制度にすること。例えば、修正表提出期限が35日なので、意見申立てから文科省の回答までの日数は修正表提出期限の35日から除外すること。また、現行制度では、意見申立てを検定意見を付けた同じ検定審議会が行っているが、これを改善するなど。
7)検定決定後に検定意見の誤りが明らかになった時に、検定意見撤回についての条項を検定規則に設けること。
8)検定基準に沖縄条項を設け、それに対応して検定審議会委員に沖縄近現代史の専門家を任命すること。
9)現行検定規則では、2000年まで明記されていた「文部大臣は、…検定審議会に諮問し、その答申にもとづいて」合否を決定するという規定がなく、文部科学大臣が勝手に検定を行う規定になっている。検定規則上に審議会の役割を明記すること。
10)学習指導要領は大綱的基準であるので、教科書作成の参考基準にとどめること。そのために、学習指導要領の「内容の取扱い」を検定基準から削除し、「『学習指導要領に示す内容の取扱い』に示す事項を不足なく取り上げていること」という規定を削除すること。

Ⅲ.検定の公開に関すること
1)検定申請図書(白表紙本)を申請時から公開し、広く意見を聞いて検定に反映させるようにすること。
2)検定審議会の審議(経過や関係資料など)については、部会・小委員会も含めてすべて公開すること。
3)検定中であっても検定意見など検定に関する資料を公開するか、又は出版社が公開することを妨げないこと。

Ⅳ.将来的な改革に向けて
1)検定制度を段階的に廃止すること。例えば、高校教科書の検定の廃止、又は特定の教科の検定の廃止するなど。

4・25文科省要請書

印刷用→pdf(163k)

2008年4月25日


文部科学大臣 渡海 紀三朗 殿

私たちは沖縄戦記述に対する検定意見の撤回をあくまでも要求し
不当な検定意見を生み出した検定制度の抜本的改革を求めます


沖縄戦検定意見の撤回を求める4.24全国集会実行委員会
連絡先 大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会


 昨年12月27日、沖縄戦記述に関する訂正申請の結果公表後、文科省が検定意見を撤回せず、軍の強制の記述を認めなかったことに対し、沖縄をはじめ全国の多数の団体から強い抗議ととともに検定意見撤回、記述回復の要求が文科省に提出されました。しかしいまだ文科省はこれらの要求にまったく応えていません。よってここに、沖縄戦検定意見の撤回を求める4.24全国集会参加者一同を代表し、あらためて要請を行うものです。

 私たちは、沖縄戦での「集団自決」=強制集団死の教科書記述から「日本軍の強制」を削除させた文科省の検定意見を絶対に許すことはできません。親が子を、子が親を、兄が弟妹を殺しあわなければならなかった悲劇を、住民の自発的意思によって行われた美しい死だなどと偽ることは絶対に許すことができません。この悲劇が日本軍の命令・強制なしにはおこり得なかったということは、語ることさえできないほどの苦しい体験をくぐりぬけた人々の身体にきざみこまれ、その証言を通じて明らかになった歴史の真実です。だからこそ昨年9月の検定意見撤回を求める県民大会に11万余の人々が集まったのです。

 文科省は沖縄県民の怒りに驚き、全国にひろがる検定意見撤回の声に押されて、教科書の再訂正の申請を認めましたが、2007年末に出された結果は、根拠のない誤った検定意見をあくまでも撤回せず、日本軍の強制という記述は認めないというものでした。

 しかし3月28日に出された大江・岩波沖縄戦裁判の大阪地裁判決は、この裁判で自決命令は出していないと主張し検定意見の根拠とされた梅沢裕元隊長の陳述の信用性をほぼ全面的に否定しました。さらに、体験者の証言が具体性・迫真性を有することを認め、自決命令を発したこともあり得るとしたうえで、軍が「集団自決」に「深く関わった」ことを認めました。文科省が示した検定意見の主要な根拠が裁判所によっても否定されたことになります。文科省はこのことを重くうけとめ、2006年度の沖縄戦記述に対する検定意見をただちに撤回し、「集団自決」について日本軍の強制を示す記述を回復させるべきです。

 ところが文科省および検定審議会は、ここにいたってなお誤った検定意見に固執して誤りのさらなる上塗りを重ねています。沖縄県民の願いをふみにじり、歴史の真実を歪曲しつづけている文科省および検定審議会に対し、私たちは、強い怒りをこめて抗議します。

 このような不当な検定意見がいつまでも撤回されずに生き続けることを許すならば、すべての小中高校の教科書からあらゆる面で歴史の真実が消されることになります。戦争の真実が歪められるとき、ふたたび戦争の悲劇を繰り返すことになりかねません。

 また、そもそもこのような不当な検定意見がまかりとおるようになったのは、検定制度にも根本的な原因があります。新学習指導要領が教育への統制をいっそう強化しようとしている今、検定制度がこのまま維持されるならば、真実を歪める誤った検定意見がさらに幅をきかせることになるでしょう。誤った検定の根を絶つためには検定制度の抜本的改革がどうしても必要です。
よって私たちは、次のことを要求します。

(1)沖縄県民大会実行委員会が昨年末にあらためて決議したように、沖縄戦記述に対する2006年度の検定意見をただちに撤回し、「集団自決」に軍の強制という記述を復活させること。

(2)教科書検定制度を以下のように抜本的に改革し、検定制度を段階的に廃止すること。
ア、不透明な形で任用されている教科書調査官が検定を主導するのをやめさせ、近い将来に教科書調査官制度を廃止すること。

イ、検定審議会を文科省から独立した機関とし、委員の人選を透明化・公正化すること。

ウ、検定過程の情報を文書化し公開性を高め、市民監視のもとで検定が行われるようにすること。

エ、検定意見の強制力を緩和し、執筆者の見解が尊重されるようにすること。

2008年4月15日火曜日

4・24沖縄戦検定意見撤回を求める全国集会

転送歓迎!

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いらない!こんな教科書検定
  沖縄戦検定意見撤回を求める4・24全国集会

○日時 2008年4月24日(木) 開場18時 開始18時30分
○場所 豊島公会堂(みらい座いけぶくろ)
    JR/地下鉄丸の内線/有楽町線/西武池袋線/東武東上線
    池袋駅東口から徒歩10分
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〔報告1〕
1 東京から:検定意見撤回と記述回復の取り組み
    石山久男さん(歴史教育者協議会委員長)

2 大阪から:大江・岩波沖縄戦裁判地裁判決報告
    小牧 薫さん(大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会事務局長)

3 沖縄から:基地問題・教科書問題~沖縄からの報告
    山口剛史さん
   (沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会事務局長)
    大浜敏夫さん(沖縄県教職員組合委員長)
    松田 寛さん(沖縄県高等学校障害児学校教職員組合委員長) 
  
  *首都圏在住の沖縄出身大学生からの発言 

〔報告2〕

1 教科書検定制度の問題点を暴く
    俵 義文さん(子どもと教科書全国ネット21 事務局長)

2 理科教科書検定の実態と学界からの批判
    小佐野正樹さん(教科書シンポジウム世話人会)
……………………………………………………………………………………………
□■□ 講演 □■□ 世界から見た日本の教科書検定-私の経験を通して-
   
   暉峻淑子さん(埼玉大学名誉教授)


日時:2008年4月24日(木) 開場18時 開始18時30分

場所:豊島公会堂(みらい座いけぶくろ)
   JR/地下鉄丸の内線/有楽町線/西武池袋線/東武東上線
     池袋駅東口から徒歩10分
   地図 
   ※予約は不要です。会場に直接お越し下さい。

資料代:800円

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■主催:沖縄戦検定意見撤回を求める4.24全国集会実行委員会

■連絡先:大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
  〒101-0051 千代田区神田神保町3-2 千代田区労協気付
  TEL03-3264-2905  FAX03-3264-2906
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2008年4月9日水曜日

4・9「大江・岩波沖縄戦裁判」判決報告集会@東京

チラシ→pdf(176k)

転送歓迎!

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「大江・岩波沖縄戦裁判」判決報告集会
日時:2008年4月9日(水)開始:18時30分 終了予定:20時30分
場所:文京区民センター3A会議室
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2005年8月5日に元座間味島の戦隊長・梅澤裕氏と元渡嘉敷島の戦隊長・赤松嘉次氏の弟である赤松秀一氏が原告となって大江健三郎氏と岩波書店を訴えた「大江・岩波沖縄戦裁判」が昨年12月21日に結審し、この3月28日に大阪地裁で判決を迎えます。
ついては4月9日に、裁判判決の東京報告会を行います。弁護団、岩波書店、支援連絡会からの裁判報告に加え、「強制集団死」いわゆる「集団自決」体験者の貴重な証言の聞き取りを行い、「沖縄タイムス」紙上に掲載されてきた謝花直美さんのお話もあります。ぜひ、ご参加ください。

内容
○裁判報告
弁護団、岩波書店、大江・岩波沖縄戦裁判支援連絡会(大阪)から

○証言取材を通して見えてきた「集団自決」
 謝花直美さん(沖縄タイムス社編集委員)

日時:2008年4月9日(水)開始:18時30分 終了予定:20時30分
場所:文京区民センター3A会議室
 地下鉄都営三田線/大江戸線春日駅から徒歩0分(A2出口直上)
 丸の内線/南北線後楽園駅から徒歩3分
 JR総武線/水道橋駅から徒歩10分
 ※予約は不要です。会場に直接お越し下さい。
参加費:800円
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主催:
 大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
 大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会(大阪)
 沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会(沖縄)
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☆予告
 沖縄戦検定意見撤回を求める4.24全国集会
 ~いらない!こんな教科書検定~
  4月24日(木)18時半より 豊島公会堂(池袋西口)にて
  参加費:800円

2008年4月4日金曜日

大江・岩波沖縄戦裁判 大阪地裁判決についての声明

 大江健三郎氏と岩波書店が被告とされた「大江・岩波沖縄戦裁判」の判決が、渡嘉敷島で強制集団死が起こってちょうど63年目の2008年3月28日、大阪地方裁判所(民事第9部合議係・深見敏正裁判長)で言い渡された。

 判決では、座間味島の戦隊長であった原告梅澤裕氏と渡嘉敷島の戦隊長であった赤松嘉次氏の弟である原告赤松秀一氏が求めた『太平洋戦争』(故家永三郎著)及び『沖縄ノート』(大江健三郎著)の出版停止、謝罪広告の掲載、慰謝料の請求はいずれも棄却された。

 判決は、座間味島における強制集団死(集団自決)について「体験者らの体験談等は、いずれも自身の実体験に基づく話として具体性、迫真性を有するものといえ」「日本軍の兵士から米軍に捕まりそうになった場合には自決を促され、そのための手段として手榴弾を渡されたことを認めることができる」と述べ、自決用に手榴弾が渡されて使用されたと認定した。そして、梅澤氏の「陳述書」や「供述」については「信用性に疑問がある」と断じた。

 渡嘉敷島における強制集団死(集団自決)については「赤松大尉の西山(ママ、以下同じ)陣地北方の盆地への集合命令の後に発生しており」「手榴弾を持った防衛隊員が西山陣地北方の盆地へ集合している住民のもとへ赴いた行動を赤松大尉が容認したとすれば、赤松大尉が自決命令を発したことが一因ではないかと考えざるをえない」とした。そして「集団自決が発生した場所すべてに日本軍が駐屯しており、日本軍が駐屯しなかった渡嘉敷村の前島では、集団自決は発生しなかった」とも明確に判示した。また、赤松氏がスパイ容疑で住民を処刑したことも認定した。

 さらに、学説状況について、銭谷眞美文部科学省初等中等教育局長(当時)や布村幸彦審議官が「座間味島及び渡嘉敷島の集団自決について、日本軍の隊長が住民に対し自決命令を出したとするのが従来の通説であった」として、2005年度までの教科書検定を行ってきたことを指摘し、家永・大江氏が自決命令の存在を真実と信じるだけの十分な理由があったと認めた。

 また梅澤・赤松氏自身による自決命令については、「伝達経路等は判然とせず」「命令それ自体まで認定することは躊躇を禁じ得ない」としながらも、詳細な事実認定にもとづき「日本軍が深く関わった」という表現で日本軍の強制性を認めたことは重要である。一部マスコミにおいて「現行教科書の歴史認識を支持する判決」と報道がなされたが、訂正後の教科書が日本軍の単なる「関与」を認めたに過ぎないという事実に照らせば、それは明らかな事実誤認である。

 このように原告らの主張はことごとく退けられており、提訴そのものが不当なものであることが明らかとなった。原告らは控訴したが、一審ですでに証拠にもとづき詳細な事実認定が行われている以上、大阪高等裁判所は、直ちに控訴棄却の判決を言い渡し、一審判決を維持すべきである。私たちは、今後、そのための運動を強化する。

 梅澤「陳述書」を根拠にして行われた文部科学省による2006年度教科書検定における検定意見は、その根拠が判決によっても否定されたのであるから直ちに撤回し、沖縄戦の「集団自決」に日本軍の命令・強制を示す記述を回復させるべきである。私たちは、文部科学省に対し、このことを強く要求する。

2008年4月4日

       

沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会
大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会
連絡先:〒530-0012 大阪市北区芝田2-4-2牛丸ビル3階
「うずみび」編集部

2008年3月28日金曜日

判決要旨(詳細)沖縄タイムス

「集団自決」訴訟判決(要旨)沖縄タイムス2008年3月29日(土) 朝刊

 「沖縄ノート」の各記述は著書である被告大江健三郎(以下、大江)が沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」の問題を本土の日本人の問題としてとらえ返そうとしたものである。

 各記述には、慶良間諸島の「集団自決」の原因について、日本人の軍隊の部隊の行動を妨げずに食糧を部隊に提供するために自決せよとの命令が発せられるとの記載や渡嘉敷島で住民に「集団自決」を強要させたと記憶される男である守備隊長との趣旨の記述などがあり、渡嘉敷島における「集団自決」を命じたのが、当時の守備隊長であることが前提となっている。

 また「この血なまぐさい座間味村、渡嘉敷島のむごたらしい現場」との記載があり、大江自身、本人尋問で「沖縄ノート」が原告梅澤裕(以下、梅澤)をも対象にしたことを自認している。

 渡嘉敷島、座間味島で「集団自決」が行われた際に、故赤松嘉次(以下、赤松)が渡嘉敷島の、梅澤が座間味島の守備隊長もしくは軍隊の長であることを示す書籍は多数存在するなど、「沖縄ノート」の各記述内容が赤松、梅澤に関する記述であると特定し得ることは否定できない。

 以上、特定性ないし同定可能性の有無について被告らの主張は、理由がないというべきである。

 家永三郎(以下、家永)著の「太平洋戦争」の記述には「座間味島の梅澤隊長は、老人・こどもは村の忠魂碑前で自決せよと命令した」などとの記述があり、梅澤が部隊の食糧を確保するために、本来、保護してしかるべきである老幼者に対して無慈悲に自決することを命じた冷酷な人物であるとの印象を与え、梅澤の社会的評価を低下させる記述であることは明らかである。

 「沖縄ノート」の記述では、座間味島、渡嘉敷島を含む慶良間諸島での「集団自決」が日本軍の命令によるものであるとし、「集団自決」の責任者の存在を示唆している。ほかの記述と併せて読めば、座間味島および渡嘉敷島の守備隊長である梅澤、赤松が「集団自決」の責任者であることをうかがわせる。したがって、「沖縄ノート」の記述は「集団自決」という平時ではあり得ない残虐な行為を命じたものとして、梅澤および赤松の社会的評価を低下させるものと認められる。

 名誉棄損が違法性がないと判断されるために、「太平洋戦争」、「沖縄ノート」の執筆、出版を含む表現行為の主な動機が公益を図る目的であるかを見る。

 「太平洋戦争」は、歴史研究書であり、その記述は公共の利害に関するものであること、公益を図る目的を併せ持ってなされたものであることには当事者間の争いがない。

 家永は多数の歴史的資料、文献等を調査した上で執筆したことが認められる。「太平洋戦争」の記述の主な目的は戦争体験者として、また、日本史の研究者として太平洋戦争を評価、研究することにあったと認められ、それが公益を図るものであることは明らかだ。

 「沖縄ノート」は、大江が沖縄が本土のために犠牲にされ続けてきたことを指摘。日本人とは何かを見つめ、戦後民主主義を問い直したものであること、各記述は、沖縄戦における「集団自決」の問題を本土日本人の問題としてとらえ返そうとしたものであることが認められる。

 これらの事実および、梅澤、赤松が公務員に相当する地位にあったことを考えると、「沖縄ノート」の記述の主な目的は、日本人の在り方を考え、読者にも反省を促すことにあったものと認められ、公益を図るものであることは明らかだ。

 以上によれば、「太平洋戦争」、「沖縄ノート」の各記述に関する表現行為の目的がもっぱら公益を図る目的であると認められる。


太平洋戦争時の沖縄の状況


 1944年6月ごろから、三二軍が沖縄に駐屯を開始した。三二軍司令官の牛島満は、沖縄着任の際、沖縄における全軍に対し、「防諜ニ厳ニ注意スヘシ」と訓示を発した。

 このように沖縄において防諜対策は、日本軍の基本的かつ重要な方針だった。三二軍司令部の基本方針を受け、各部隊では民間人に対する防諜対策が講じられた。

 軍人軍属を問わず標準語以外の使用を禁じ、沖縄語を使用する者をスパイとみなし処分する旨の命令や、島しょにおける作戦では原住民がスパイ行為をするから気を許してはならない旨の訓令などが出された。

 また、三二軍は同11月18日、県民を含めた総力戦体制への移行を急速に推進し、「軍官民共生共死の一体化」を具現するとの方針を発表した。

 慶良間諸島には同9月、陸軍海上挺進戦隊が配備され、座間味島に梅澤が隊長を務める第一戦隊、阿嘉島・慶留間島に野田隊長(以下、野田)の第二戦隊、渡嘉敷島に赤松が隊長を務める第三戦隊が駐留した。

 45年3月の米軍侵攻当時、慶良間諸島に駐屯していた守備隊はこれらの戦隊のみであった。「集団自決」発生当時、米軍の空襲や艦砲射撃のため、沖縄本島など周囲の島との連絡が遮断されており、食糧や武器の補給が困難な状況にあった。

 海上挺進戦隊は、もともと特攻部隊としての役割を与えられていたことから、米軍に発見されないよう、特攻船艇の管理は厳重で、そのほかの武器一般の管理も同様であった。

 渡嘉敷島は44年10月10日の空襲以降、それまで徴用され陣地構築作業をしていた男子77人があらためて召集され、兵隊とともに国民学校に宿営することになった。

 座間味島は45年3月23日から25日まで空襲を受けた。住民は壕に避難するなどしていたが、同25日夜、伝令役が住民に忠魂碑前に集合するよう伝えて回った。その後、同26日、多数の住民が手榴弾を使用するなどして集団で死亡した。

 同27日午前、米軍が渡嘉敷島に上陸した。赤松は、米軍の上陸前、巡査に「住民は西山陣地北方の盆地に集合するよう」指示し、巡査は防衛隊員とともに住民に集合を促した。住民は同28日、防衛隊員らから配布された手榴弾を用いるなどして、集団で死亡した。

 慶留間島では、45年2月8日、野田が住民に対し「敵の上陸は必至。敵上陸の暁には全員玉砕あるのみ」と訓示し、同3月26日、米軍上陸の際、「集団自決」が発生した。

 以上の「集団自決」が発生した場所すべてに日本軍が駐屯しており、日本軍が駐屯しなかった渡嘉敷村の前島では、「集団自決」は発生しなかった。


日本軍による住民加害


 元大本営参謀で厚生省引揚援護局の厚生事務官馬淵新治(以下、馬淵)の調査によれば、日本軍の住民に対する加害行為は各地で行われていた。

 例えば、馬淵は「将兵の一部が勝手に住民の壕に立ち入り、必要もないのに『軍の作戦遂行上の至上命令である。立ち退かないものは非国民、通敵者として厳罰に処する』等の言辞を敢えてして、住民を威嚇強制のうえ壕からの立ち退きを命じて己の身の安全を図ったもの」。

 「ただでさえ貧弱極まりない住民個人の非常用食糧を『徴発』と称して略奪するもの、住民の壕に一身の保身から無断進入した兵士の一団が無心に泣き叫ぶ赤児に対して『此のまま放置すれば米軍に発見される』とその母親を強制して殺害させたもの」などがあったとしている。

 また「敵上陸以後、いわゆる『スパイ』嫌疑で処刑された住民は十指に余る事例を聞いている」としている。

 日本軍は、渡嘉敷島において防衛隊員であった国民学校の大城徳安訓導が身寄りのない身重の婦人や子どもの安否を気遣い、数回部隊を離れたため、敵と通謀する恐れがあるとして、これを処刑した。

 また、赤松は「集団自決」でけがをして米軍に保護され治療を受けた2人の少年が米軍の庇護のもとから戻ったところ、米軍に通じたとして殺害した。さらに米軍の捕虜となり、米軍の指示で投降勧告にきた伊江島の住民6人に、自決を勧告し、処刑したこともあった。

 そのほか、沖縄では、スパイ容疑で軍に殺された者など、多数の軍による住民加害があった。


援護法の適用


 梅澤命令説および赤松命令説は、沖縄で援護法の適用が意識される以前から存在していたことが認められる。援護法適用のために捏造されたものであるとの主張には疑問が生ずる。

 また、隊長命令がなくても戦闘参加者に該当すると認定された自決の例もあったことが認められ、梅澤命令説および赤松命令説を捏造する必要があったのか直ちには肯定し難い。

 宮村幸延が作成したとされる「証言」と題する親書の記載内容は、「昭和二十年三月二十六日の集団自決は梅澤部隊長の命令ではなく、当時兵事主任兼助役の宮里盛秀の命令で行われた」との部分も含めて拝信しがたい。これに関連する原告梅澤の陳述書も拝信し難い。

 「母の遺したもの」の記載を子細に検討すれば、「集団自決」に援護法を適用するために原告梅澤の自決命令が不可欠であったことや、「村の長老」から虚偽の供述を強要されたことなど援護法適用のために自決命令の捏造を直ちにうかがわせるものではない。

 沖縄において、住民が「集団自決」について援護法が適用されるよう強く求めていたことは認められるものの、そのために梅澤命令説および赤松命令説が捏造されたとまで認めることはできない。


梅澤命令説


 「集団自決」の体験者の供述から、原告梅澤による自決命令の伝達経路等は判然とせず、梅澤の言辞を直接聞いた体験者を全証拠から認められない。取材源が明示されていない「鉄の暴風」「秘録 沖縄戦史」「沖縄戦史」等から、直ちに「太平洋戦争」にあるような「老人・こどもは村の忠魂碑の前で自決せよ」との梅澤の命令それ自体までは認定することには躊躇を禁じ得ない。

 しかしながら、梅澤が座間味島における「集団自決」に関与したものと推認できることに加え、少なくとも2005年度の教科書検定までは、高校の教科書に日本軍によって「集団自決」に追い込まれた住民がいたと記載されていた。布村審議官は、座間味島および渡嘉敷島の「集団自決」について、日本軍の隊長が住民に自決命令を出したとするのが通説であったと発言していた。

 学説の状況、諸文献の存在、その信用性に関する認定、判断、家永および大江の取材状況等を踏まえると、梅澤が座間味島の住人に対し「太平洋戦争」の内容の自決命令を発したことを直ちに真実と断定できないとしても、合理的資料もしくは根拠があると評価できる。

 各書籍の発行時において、家永や被告らが事実を真実であると信じるについての相当の理由があるものと認めるのが相当である。


渡嘉敷島の「集団自決」


 体験者らの体験談は、いずれも自身の実体験に基づく話として具体性、迫真性、信用性を有することができる。

 渡嘉敷島における「集団自決」は、1945年3月27日に渡嘉敷島に上陸した翌日の28日に赤松大尉に西山陣地北方の盆地への集合命令の後に発生している。赤松大尉率いる第三戦隊の渡嘉敷島の住民らに対する加害行為を考えると、赤松大尉が上陸した米軍に渡嘉敷島の住民が捕虜となり、日本軍の情報が漏えいすることを恐れて自決命令を発したことがあり得ることは、容易に想像できる。

 赤松大尉は防衛隊員であった国民学校の大城徳安訓導が、身重の夫人や子供の安否を気遣い、数回部隊を離れたため、敵と通謀する恐れがあるとして処刑している。

 米軍の上陸後、手榴弾を持った防衛隊員が西山陣地北方の盆地へ集合している住民のもとへ赴いた行動を赤松大尉が容認したとすれば、自決命令を発したことが一因ではないかと考えざるを得ない。

 第三戦隊に属していた皆本義博証人が手榴弾の交付について「恐らく戦隊長の了解なしに勝手にやるようなばかな兵隊はいなかったと思います」と証言していることは、先に判示している通り。手榴弾が「集団自決」に使用されている以上、赤松大尉が「集団自決」に関与していることは、強く推認される。

 沖縄県で「集団自決」が発生したすべての場所に日本軍が駐屯し、駐屯しなかった渡嘉敷村の前島では、「集団自決」は発生しなかったことを考えると、「集団自決」は日本軍が深くかかわったものと認めるのが相当である。

 沖縄では、第三二軍が駐屯し、その司令部を最高機関として各部隊が配置され、渡嘉敷島では赤松大尉を頂点とする上意下達の組織であったと認められる。渡嘉敷島における「集団自決」に赤松大尉が関与したことは十分に推認できる。

 渡嘉敷島の「集団自決」の体験者の体験談等から赤松大尉による自決命令の伝達経路は判然とせず、命令を直接聞いた体験者を全証拠から認められない。取材源などは明示されていない。「鉄の暴風」「秘録 沖縄戦史」「沖縄戦史」等から「沖縄ノート」にある記述のような赤松大尉の命令の内容それ自体まで認定することには躊躇を禁じ得ない。

 しかしながら、合理的資料もしくは根拠があると評価できるから、「沖縄ノート」の発行時に、被告らが事実を真実と信じるについて相当の理由があったと認めるのが相当である。

 被告らによる梅澤および赤松大尉に対する名誉棄損は成立せず、したがって、その余の点について判断するまでもなく、これを前提とする損害賠償、出版の差し止めに理由はない。


文献の評価


 「鉄の暴風」には、初版における梅澤の不審死の記載、渡嘉敷島への米軍の上陸日時に関し、誤記が認められるものの、戦時下の住民の動き、非戦闘員の動きに重点を置いた戦記として、資料価値を有するものと認める。

 「母の遺したもの」には木崎軍曹が住民に「途中で万一のことがあった場合は、日本女性として立派な死に方をしなさいよ」と手榴弾一個が渡されたとのエピソードも記載され、日本軍関係者が米軍の捕虜になるような場合には自決を促していたことを示す記載としての意味を有する。梅澤命令説を肯定する間接事実となり得る。

 「ある神話の背景」に、赤松大尉による自決命令があったという住民の供述は得られなかったとしながら、取材をした住民がどのような供述をしたかについては詳細に記述していない。家永教科書検定第三次訴訟第一審の証言で、「ある神話の背景」の執筆に当たっては、富山兵事主任に取材をしなかったと証言しているが、それが事実であれば、取材対象に偏りがなかったか疑問が生じる。

 「ある神話の背景」は、命令の伝達経路が明らかになっていないなど、赤松命令説を否定する見解の有力な根拠となり得るものの、客観的な根拠を示して覆すものとも、渡嘉敷島の「集団自決」に関して軍の関与を否定するものともいえない。

 米軍の「慶良間列島作戦報告書」で、原告が主張するように訳したとしても、日本軍の兵士たちが慶留間の島民に対して米軍が上陸した際には自決するよう促していたことに変わりはなく、その訳の差異が本訴請求の当否を左右するものとは理解されない。

 赤松大尉は、大城徳安や米軍の庇護から戻った2少年、伊江島の住民男女6人を正規の手続きを踏むこなく、処刑したことに関与した。住民への加害行為を行っているのであって、こうした人物を立派な人だった、悪く言う者はいないなどと評価することが正当であるかには疑問がある。

 知念朝睦証人は、陳述書に「私は、正式には小隊長という立場でしたが、事実上の副官として常に赤松隊長の傍にいた」と記載しているが、西山陣地への集結指示については、聞いていない、知らない旨証言。「住民が西山陣地近くに集まっていたことも知りませんでした」と記載している。

 いずれにしても赤松大尉の自決命令を「聞いていない」「知らない」という知念証人の証言から自決命令の存在を否定することは困難である。


皆本証言


 赤松大尉のそばに常にいたわけではないことが認められ、赤松大尉の言動を把握できる立場になかった。赤松大尉の言動についての証言の評価に当たっては、この点を重視する必要がある。

 皆本義博証人の証言は、手榴弾を交付した目的を明示する陳述書の内容と食い違い、手榴弾に関する陳述書の記載およびその証言には疑問を禁じ得ない。


梅澤証言


 梅澤は本人尋問で、手榴弾を防衛隊員に配ったことも、手榴弾を住民に渡すことも許可していなかったと供述する。

 一方で木崎軍曹が手榴弾を交付したことについて、木崎軍曹が住民の身の上を心配して行ったのではないかと供述する。

 慶良間諸島は沖縄本島などと連絡が遮断されていたから、食糧や武器の補給が困難な状況にあったと認められ、装備品の殺傷能力を検討すると手榴弾は極めて貴重な武器であったと認められる。

 軍の装備が不十分で、補給路が断たれていたことについては、梅澤自身も、村民に渡せる武器、弾薬はなかったと供述している。

 そうした状況で、戦隊長である梅澤の了解なしに木崎軍曹が(住民の)身の上を心配して手榴弾を交付したというのは、不自然である。

 貧しい装備の戦隊長である梅澤が、そうした部下である兵士の行動を知らなかったというのは極めて不自然であるというべきである。

 梅澤作成の陳述書と本人尋問の結果は、信用性に疑問がある。


赤松手記


 赤松手記は、自己への批判を踏まえ、自己弁護の傾向が強く、手記、取材ごとにニュアンスに差異が認められるなど不合理な面を否定できない。全面的に信用することは困難である。


体験者証言


 本件訴訟を契機に、宮平春子、上洲幸子、宮里育江の体験談が新聞報道されたり、本訴に陳述書として提出されたりしている。沖縄戦の体験者らの体験談は、いずれも自身の実体験に基づく話として具体性、迫真性を有するものといえる。

 また多数の体験者らの供述が、1945年3月25日の夜に忠魂碑前に集合して玉砕することになったという点で合致しているから、その信用性を相互に補完し合うものといえる。

 こうした体験談の多くに共通するものとして、日本軍の兵士から米軍に捕まりそうになった場合には自決を促され、そのための手段として手榴弾を渡されたことを認めることができる。

全面勝訴 3・28大阪地裁判決内容

全面勝訴 大阪地裁判決内容

3月28日午前10時に大阪地裁(深見敏正裁判長)で判決が言い渡されました。
これまでの多くのご支援・ご協力ありがとうございます。

原告は控訴を予定しています。今後もよろしくお願い申し上げます。

主文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。

判決骨子
1 「沖縄ノート」では原告梅澤及び赤松大尉の氏名を明示していないが、引用された文献、新聞報道等でその同定は可能である。

2 本件各書籍は、公共の利害に関する事実にかかり、もっぱら公益を図る目的で出版されたものと認められる。

3 梅澤命令説及び赤松命令説は、集団自決について援護法の適用を受けるためのねつ造であるとは認められない。

4 座間味島及び渡嘉敷島ではいずれも集団自決に手榴弾が利用されたこと、沖縄に配備された第32軍が防諜に意を用いていたこと、第1、第3戦隊の装備からして手榴弾は極めて重要な武器であったこと、沖縄での集団自決はいずれも日本軍が駐屯していた島で発生し、日本軍の関与が窺われことなどから原告梅澤及び赤松大尉が集団自決に関与したものと推認できる上、2005年度までの教科書検定の対応、集団自決に関する学説の状況、判示した諸文献の存在とそれらに対する信用性についての認定及び判断、家永三郎及び被告大江の取材状況等を踏まえると、原告梅澤及び赤松大尉が本件各書籍記載の内容のとおりの自決命令を発したことを直ちに真実であると断定できないとしても、その事実については合理的資料若しくは根拠があると評価でき、家永三郎及び被告らが本件各記述が真実であると信じるについて相当の理由があった。

5 「沖縄ノート」の各記述は、被告大江が赤松大尉に対する個人攻撃をしたなど意見ないし論評の域を逸脱したものとは認められない

判決要旨
1 「沖縄ノート」は座間味島と渡嘉敷島の元守備隊長を原告梅澤及び赤松大尉だと明示していないが、引用された文献、新聞報道などで同定は可能であり、本件各書籍の各記載は、原告梅澤及び赤松大尉が残忍な集団自決を命じた者だとしているから原告梅澤及び赤松大尉の社会的評価を低下させる。

2 「太平洋戦争」は、太平洋戦争を評価、研究する歴史研究書で、「沖縄ノート」は日本人とは何かを見つめ、戦後民主主義を問い直した書籍であって、原告梅澤及び赤松大尉に関する本件各記述を掲載した本件各書籍は、公共の利害に関する事実に係り、もっぱら公益を図る目的で出版されたと認められる。

3 原告らは、梅澤命令説及び赤松命令説は集団自決について援護法の適用を受けるためのねつ造だと主張するが、複数の誤記があるものの、戦時下の住民の動き、非戦闘員の動きに重点を置く戦記として資料価値を有する「鉄の暴風」、米軍の「慶良間列島作戦報告書」が援護法の適用が意識される以前から存在し、ねつ造の主張には疑問があり、原告らの主張に沿う照屋昇雄の発言は、その経歴等に照らし、また宮村幸延の「証言」と題する書面も、同人が戦時中在村していなかったことや作成経緯に照らして採用できず、「母の遺したもの」によってもねつ造を認めることはできない。

4 座間味島及び渡嘉敷島ではいずれも集団自決に手榴弾が使われたが、多くの体験者が、日本軍の兵士から米軍に捕まりそうになった際の自決用に交付されたと語っていること、沖縄に配備された第32軍が防諜に意を用いており、渡嘉敷島では防衛隊員が身重の妻等の安否を気遣い数回部隊を離れたために敵に通牒するおそれがあるとして処刑されたほか、米軍に庇護された2少年、投降勧告に来た伊江島の男女6名が同様に処刑されたこと、米軍の「慶良間列島作戦報告書」の記載にも日本軍が、住民が捕虜になり、日本軍の情報が漏れることを懸念したことを窺わせること、第1、第3戦隊の装備から手榴弾は極めて貴重な武器であり、慶良間列島が沖縄本島などと連絡が遮断され、食糧や武器の補給が困難だったこと、沖縄で集団自決が発生したすべての場所に日本軍が駐屯しており、日本軍が駐屯していなかった前島では集団自決が発生しなかったことなどの事実を踏まえると、集団自決については日本軍が深くかかわったと認められ、島で原告梅澤及び赤松大尉を頂点とする上意下達の組織であったことからすると、それぞれの島における集団自決に原告梅澤及び赤松大尉が関与したことは十分に推認できるけれども、自決命令の伝達経路などが判然としないため、本件各書籍に記載された通りの自決命令それ自体まで認定することには躊躇を禁じ得ない。

 原告梅澤及び赤松大尉が集団自決に関与したものと推認できることに加え、2005年度までの教科書検定の対応、集団自決に関する学説の状況、判示した諸文献の存在とそれらに対する信用性についての認定及び判断、家永三郎及び被告大江の取材状況等を踏まえると、原告梅澤及び赤松大尉が本件各書籍記載の内容の自決命令を発したことを直ちに真実であると断定できないとしても、その事実については合理的資料もしくは根拠があると評価できるから、本件各書籍発行時に、家永三郎及び被告らが本件各記述が真実であるとと信じるについて相当の理由があったものと認めるのが相当であり、それは本訴口頭弁論終結時においても径庭(けいてい)はない。 したがって被告らによる原告梅澤及び赤松大尉への名誉棄損は成立せず、それを前提とする損害賠償はもとより本件各書籍の出版等の差し止め請求も理由がない。

5 「沖縄ノート」は赤松大尉へのかなり強い表現が用いられているが、「沖縄ノート」の主題等に照らして、被告大江が赤松大尉に対する個人攻撃をしたなど意見ないし論評の域を逸脱したとは認められない。


「集団自決」軍が関与 元隊長らの請求棄却 - 琉球新報 -
認められなかった隊長陳述 岩波・大江裁判、証言反映の「勝訴」 - 琉球新報 -
決意「教科書正す」/勝利判決 国に重し - 沖縄タイムス -
沖縄タイムス社説 2008.3.29

【沖縄集団自決訴訟・大江氏側会見詳報】(1)「軍命令を明確に認定」 - MSN産経ニュース
【沖縄集団自決訴訟・大江氏側会見詳報】(2)「裁判背景に大きな政治的動き」 - MSN産経ニュース

【沖縄集団自決訴訟・大江氏側会見詳報】(3)「中傷のために書いたのではない」 - MSN産経ニュース

2008年3月15日土曜日

3・28「大江・岩波裁判」判決報告集会@大阪

チラシ→pdf(392k)
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沖縄戦の真実を判決に
「大江・岩波裁判」判決報告集会

日時:2008年3月28日(金) 14:00~
場所:エルおおさか6階大会議室
   アクセス http://www.l-osaka.or.jp/pages/access.html
 弁護団報告、安仁屋政昭沖縄国際大名誉教授の講演など
資料代:1000円
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第1回口頭弁論から約2年。大江・岩波沖縄戦裁判は昨年12月21日、ついに結審しました。判決は3月28日(金)午前10時から大阪地裁で言い渡されます。判決を受け、同日午後2時から報告集会を開きます。
弁護団に判決内容を評価・分析をしてもらうとともに、この裁判で陳述書も提出した沖縄国際大学名誉教授で沖縄戦研究者の安仁屋政昭さんに判決の感想を含め、この裁判を総括していただきます。ぜひご参加下さい。

日時:2008年3月28日(金) 14:00~
場所:エルおおさか6階大会議室
アクセス http://www.l-osaka.or.jp/pages/access.html

●京阪・地下鉄谷町線「天満橋駅」より西へ300m
●京阪・地下鉄堺筋線「北浜駅」より東へ500m
●地下鉄御堂筋線「淀屋橋駅」より東へ1200m
●JR東西線「大阪天満宮駅」より南へ850m

資料代:1000円

講演 判決を聞いて
   安仁屋政昭さん(沖縄戦研究者 沖縄国際大学名誉教授)
報告 弁護団から

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主催
 大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会 
 沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会 
 大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
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2008年2月16日土曜日

3・18連続講座第5回 検証・教科書検定制度の問題点

チラシ→pdf(108k)
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連続講座第5回 検証・教科書検定制度の問題点
そもそも「教科書検定」ってどんな制度?
日時:2008年3月18日(火)開始:18時半 終了予定:21時
場所:文京シビックセンター4階シルバーホール
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沖縄戦「集団自決」について「軍の命令」の記述を削除した「検定意見」。
「検定意見はあくまで正しい」という立場に固執する文部科学省。検定意見撤回を目指すたたかいのなかで、見えてきた教科書検定制度の欠陥・問題点とは…?

〔講師〕
「何故こんな検定が?検定制度の何が問題か」
 俵 義文さん
  子どもと教科書全国ネット21 事務局長
  沖縄戦首都圏の会呼び掛け人

「編集者から見る教科書検定の実際」
 現職・高校教科書編集者

2008年3月18日(火)
開始:18時半 終了予定:21時
会場:文京シビックセンター4階シルバーホール
参加費:500円
◆予約は不要です。当日会場に直接お越しください。
地下鉄都営三田線/大江戸線春日駅から徒歩1分(地下から直結)
丸の内線/南北線後楽園駅から徒歩1分 
JR総武線水道橋駅から徒歩10分水道橋駅


主 催
大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
(略称:沖縄戦首都圏の会)
連絡先:千代田区神田神保町3-2 千代田区労協気付
http://okinawasen.blogspot.com/

2008年2月14日木曜日

2・27映画「GAMA-月桃の花」上映会のご案内

チラシ→pdf(200k)
2・27 沖縄県民映画「GAMA-月桃の花」上映会のご案内


日時:2月27日(水)開場-18:30 開演-19:00 
※上映に先立ち海勢頭豊(うみせど ゆたか)さんの舞台挨拶あり
場所:文京シビックホール小ホール 
   (東京メトロ後楽園駅徒歩3分 都営地下鉄春日駅連絡通路)
料金:予約-1200円 当日-1500円  高校生以下-800円


沖縄戦終結50周年記念作品として製作された「GAMA-月桃の花」は、資金難で何度も撮影中断の憂き目にあいながら1996年4月に完成、今年で13年目を迎えました。
この間、沖縄を取り巻く状況も大きく変化してきましたが、沖縄戦の実相を余すところなく描かれている「GAMA-月桃の花」は自主上映・沖縄修学旅行の事前学習としてコンスタントに上映が続けられてきました。

昨年2月にはベルリン国際映画祭に参加、全国200万人以上の方々に鑑賞いただいた奇跡の映画、今回はニュープリントでの上映です、是非この機会にご鑑賞下さい。

☆脚本は大城将保(嶋津与志)さんです

  •  製作  海勢頭豊

  •  企画  橘祐典

  •  監督  大澤豊

  •  脚本  嶋津与志

  •  原案  嶋津与志

  •  音楽  海勢頭豊

  •  出演  朝霧舞 沖田浩之 川平慈英 島袋匠造 玉木初枝 新里奈津子


詳細はhttp://www.gettounohana.com

主催:GAMA-月桃の花を成功させる会
共催:大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
   沖縄平和ネットワーク首都圏の会
   
 お問い合わせ・ご予約は
 電話 03-3560-2250 E-mail:ggs@gettounohana.com

2008年1月13日日曜日

1・22 教科書検定意見撤回を求める集会

チラシ→pdf(125k)

転送歓迎 !
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■ 1・22 教科書検定意見撤回を求める集会    
  ~「日本軍の強制」を文科省はなぜ認めない!~      
日時:1月22日(火) 開場18時 開会18時半 終了予定21時
場所:文京区民センター3階 3A会議室
主催:大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
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○日時 1月22日(火) 開場18時 開会18時半 終了予定21時

○場所 文京区民センター3階 3A会議室
 地下鉄 都営三田線・大江戸線春日駅から徒歩0分
     丸の内線・南北線後楽園駅から徒歩3分
 JR総武線水道橋駅から徒歩10分

○資料代:500円 ◆予約は不要です。当日会場に直接お越しください。
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○発言
教科書検定問題の経過報告
  石山久男(歴史教育者協議会委員長)

教科書執筆者として
  坂本昇(都立高校教員)

今回の訂正申請の問題点
  林博史(関東学院大学教授)

学校現場から
  平井美津子(大阪・中学校教員)

「大江・岩波沖縄戦裁判」結審報告
  小牧薫(大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会事務局長)

「日本軍の強制」を認めない背景
  俵義文(子どもと教科書全国ネット21事務局長)
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○内容
昨年12月26日、文部科学省は、沖縄戦記述に関する日本史教科書6社8点の訂正申請について、審議経過とその結果を発表しました。

その内容は、日本軍が「集団自決」を強制したという趣旨の記述はすべて削除され、文科省、検定審議会は、あくまでも検定意見は撤回しない態度を貫いています。

これに対して沖縄では早速怒りの声があがり、28日に沖縄県民大会実行委員会が決定した政府・文科省への要請書のなかでも「『集団自決』の記述の中に『旧日本軍による強制』の語句を入れるとともに、検定意見を撤回されるよう、強く要請する」としています。「沖縄戦首都圏の会」も12月27日に文科省に改めて「検定意見撤回」を要請しました。

この集会では、検定審議会へ意見書を提出した林博史さんに、軍の強制を認めなかった訂正申請結果や意見書で主張されたことをお話しいただき、教科書執筆者、教育現場からの発言。3月に判決を控えている「大江・岩波沖縄戦裁判」の報告も行います。

ひきつづき「教科書検定意見撤回」を求める重要な集会です。ぜひ御参加下さい。
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連絡先:大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
http://okinawasen.blogspot.com/
東京都千代田区神田神保町3-2 千代田区労協気付
E-MAIL okinawasen@gmail.com
TEL 03-3264-2905 FAX 03-3264-2906
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